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相続土地国庫帰属制度とは?司法書士が解説する手続きと注意点

法改正情報

2024.05.21

相続土地国庫帰属制度は、相続した土地を国に帰属させることができる新しい制度です。相続人が土地を相続する際の負担を軽減するためのこの制度について、司法書士が詳しく解説します。本記事では、制度の概要、手続きの流れ、申請時の注意点などをわかりやすく説明し、相続人が適切に対応できるようサポートします。

相続土地国庫帰属制度とは?

相続した土地について、「遠くに住んでいて利用する予定がない」、「周りの土地に迷惑がかかるから管理が必要だけど、負担が大きい」といった理由により、土地を手放したいというニーズが高まっています。

このような土地が管理できないまま放置されることで、将来、「所有者不明土地」が発生することを予防するため、相続又は遺贈(遺言によって特定の相続人に財産の一部又は全部を譲ること)によって土地の所有権を取得した相続人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする「相続土地国庫帰属制度」が創設されました。

土地の管理や維持に困難を感じる相続人が、国に土地を帰属させることで、管理責任や費用負担を軽減することを目的としており、令和5年4月27日から開始しています。

リンク:相続土地国庫帰属制度について(法務省)

制度の背景と目的

相続土地国庫帰属制度の導入背景には、以下のような課題があります。

➀管理放棄された土地の増加
長期間にわたって所有者が不明な土地が増加しています。これらの土地は適切に管理されず、公共利益に反することもあります。
国がこれらの土地を受け継ぐことで、適切な利用や管理を行い、社会全体の利益を追求できると考えられています。

②土地の管理コスト
なぜ「タダでもいらない」のかといえば、土地は、所有をしていればそれだけで管理に手間や費用がかかり続けるためです。

まず、固定資産税がかかります。さらに、近隣に住人がいる地域であれば、定期的な草刈りなどの手入れもしなければなりません。更地ではなく、土地に建物が建っていれば、防犯、防災の観点から、取り壊す必要もあり、それにもお金がかかります。さらに、万一、使われていない土地が原因で、近隣住民に被害が生じるような事件、事故があれば、所有者が損害賠償責任を負わされる可能性もあります。国が土地を受け継ぐことで、管理費用を削減できると期待されています。

③都市計画や公共施設の整備
「使えない土地」の問題は、相続人だけの問題にとどまりません。こういった土地が相続された後は、往々にして、所有者の移転登記もされず、故人の名義のまま放置状態にされてしまいます。それが、3代、4代と相続されていくと、誰がその所有者なのかわからなくなってしまいます。

国や自治体が、公共的な目的(道路建設など)でそのような土地を利用したい際に、所有者を調べるのに時間と手間が非常にかかったり、最終的に所有者が不明であれば、利活用に支障が生じたりします。現在、そういう事例は決して少なくないのです。

そこで、使えない土地を相続して困る相続人から、国が土地を引き取って管理することで、相続人の負担を減らすとともに、将来の公共的な利活用にも備えられるようにするために制定されたのが、相続土地国庫帰属制度なのです。土地の国庫帰属により、都市計画や公共施設の整備が円滑に進められます。

以上の要因から、相続土地国庫帰属制度は土地の適切な利用と社会的な利益を促進するために導入されています。

他国でも同様の制度はある?

全く同じというわけではないですが、外国でも自治体が引き取る(買い取る)制度はあるようです。

➀ フランス 「土地の公共利用制度」(Droit de préemption urbain)
 フランスでは、土地の売却時に自治体が優先的に購入する権利を持っています。土地利用規制や商業施設の立地規制などが厳格に行われています

② ドイツ 「土地の公共利用権」(Vorkaufsrecht)
 ドイツでは、土地の売却時に自治体が優先的に購入できる権利を持っています。これにより、都市計画や公共施設の整備が円滑に進められています。

相続土地国庫帰属制度の手続きの流れ

相続土地国庫帰属制度を利用するための手続きは、以下のように進められます。

➀ 適用要件の確認: 対象となる土地が制度の適用要件を満たしているか確認します。

② 申請書類の準備: 必要な書類を揃え、申請書を作成します。

③ 申請の提出: 相続土地国庫帰属申請書を所管の機関に提出します。

④ 審査: 提出された申請書類が審査されます。要件を満たしている場合、国庫帰属が認められます。

⑤ 手続きの完了: 国庫帰属が認められた土地は国に引き渡され、管理責任が移転します。

リンク:相続土地国庫帰属制度の概要(法務省)

申請時の注意点

相続土地国庫帰属制度を利用する際には、以下の点に注意する必要があります。詳しくは法務省のホームページで確認してください。ここではおおまかに説明します。

➀申請できる人
相続土地国庫帰属制度の申請は、相続または遺贈によって土地を取得した人が行えます。

②対象となる土地の要件
制度では、通常の管理処分にあたって過分の費用や労力を要する土地は対象外となります。要件を確認して申請しましょう
 
③必要な添付書類
申請には以下の添付書類が必要です:
・土地の位置と範囲を明らかにする図面
・隣接する土地との境界点を示す写真
・土地の形状を明らかにする写真
・申請者の印鑑証明書(遺贈によって取得した相続人の場合)

相続土地国庫帰属制度の申請は、却下事由を確認した上で行い、不承認となる事項に該当しないことを注意して進めてください。詳しくは司法書士、弁護士に相談してみてください。

リンク:相続土地国庫帰属制度において引き取ることができない土地の要件(法務省)

専門家のアドバイスとベストプラクティス

相続土地国庫帰属制度をスムーズに利用するためには、専門家の助言が重要です。以下のポイントを押さえておきましょう。

➀早期の相談: 土地の相続が発生したら、早めに司法書士や弁護士に相談することが大切です。

②書類の整備: 必要書類を漏れなく準備し、申請手続きをスムーズに進める。

③制度の最新情報: 法改正や制度変更があるため、最新情報を確認する。

まとめ

相続土地国庫帰属制度は、相続した土地を国に引き渡すことで、相続人の負担を軽減する有益な制度です。相続土地国庫帰属制度についての理解を深め、必要な手続きをしっかりと行いましょう。司法書士として、相続人がこの制度を適切に利用できるようサポートをさせていただきます。

鹿児島での相続手続きなら、北斗司法書士事務所にお気軽にご相談ください。

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