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あなたは大丈夫?令和6年4月1日より相続登記が義務化されます!

法改正情報

2024.03.29

こんにちは。北斗司法書士事務所の新人スタッフMです。
皆さんは、令和6年4月1日より相続登記が義務化されることをご存知ですか?相続登記とは、亡くなった人が所有していた不動産の名義を相続人の名義へ変更する手続きのことです。これまで相続登記の申請は任意でしたが、今後は義務化に伴い、期限内に手続きを完了しなかった相続人に対して罰則が科せられます。今回は、相続登記義務化の概要とその背景、相続登記をしなければどうなるのかについて、わかりやすく解説していきます。

相続登記とは?「不動産の名義変更」

相続登記とは、亡くなった人が所有していた不動産の名義を相続人の名義へ変更する手続きのことです。正式には「相続による所有権移転の登記」といいます。

そもそも登記とは、登記簿と呼ばれる公の帳簿に一定の事項を記載することによって、第三者に対してもその権利の内容を明らかにし、取引の安全と円滑化を図ろうとするものです。その中でも、不動産登記は、法務局が管理する登記簿に「どこにある、どのような不動産(土地・建物)なのか」「所有者は誰なのか」「どの金融機関から、いくらお金を借りているのか」といった情報が記録されます。

相続で不動産を取得したら、亡くなった人の名義で登記されていた土地・建物を自分の名義に変更する所有権移転の登記、つまり「相続登記」を行うことで、その不動産の所有者になったことを証明することができます。なお、相続登記は相続人等からの登記申請が必要であり、相続があっても自動的に名義変更されるものではないので注意が必要です。

相続登記義務化の3つのポイント

相続登記は、相続等によって取得した不動産の権利を守り、トラブル発生を防ぐために必要な手続きです。それにも関わらず、これまでは法令上の申請が任意なため手続きが行われず放置されることが多いのが実情でした。そこで法改正により不動産登記制度の見直しが行われ、令和6年4月1日から相続登記の申請の義務化が施行されることとなりました。

それでは具体的に、相続登記の義務化とはどんな制度なのでしょうか?
以下の3つのポイントがあります。

①相続登記の期限は「不動産を相続したことを知った日から3年以内」
②過去に発生した相続でも義務化が適用
③申請を怠ったときは、10万円以下の過料

①相続登記の期限は「不動産を相続したことを知った日から3年以内」

令和6年4月1日以降、相続等による不動産取得者は「不動産を相続(取得)したことを知った日から3年以内」に相続登記の申請を行わなければなりません。

「不動産を相続(取得)したことを知った日」とは、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日のことを指します。つまり、被相続人の死亡を知っても、相続財産に不動産が含まれていることを知らなければ、登記義務は生じないことになります。

※遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を相続(取得)した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をしなければなりません。

②過去に発生した相続でも義務化が適用

義務化の施行日(令和6年4月1日)以前に発生した相続によって取得した不動産にも、相続登記の義務化は遡及して適用されます。つまり、過去に相続した不動産でも、未登記であれば義務化の対象となります。

ただし、過去に相続した不動産は令和6年4月1日になって即座に登記をしなくても罰則が科せられるわけではありません。施行日以前に相続で取得した不動産で、まだ相続登記がされていないものについては、3年後の令和9年3月31日までに相続登記をする必要があります。一方、施行日以前に相続した不動産であっても、その不動産を取得したことを知らなければ、その不動産を取得したことを知った日から3年以内が期限となります。

③申請を怠ったときは、10万円以下の過料

正当な理由なく、期限内に相続登記をしなかった場合は、10万円以下の過料に処されます。

※ちなみに、相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の資料収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケースなどは、正当な理由とみなされます。

なぜ相続登記は義務化されるのか?「所有者不明土地問題」

令和6年4月1日より相続登記は義務化され、相続により不動産を取得した場合、原則3年以内に相続登記を申請しなければならず、正当な理由なく申請を怠ると過料が科されることになります。

これまで期限や罰則が設けられていなかった相続登記。なぜ今回、義務化されるのでしょうか?

その背景には「所有者不明土地」の問題があります。

所有者不明土地とは?

所有者不明土地とは、不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地、または、所有者が判明してもその所在が不明で連絡が付かない土地のことをいいます。

2016年の国土交通省の資料によると、所有者不明土地の割合は全体の20.1%で、約410万ヘクタールの面積を占めており、これは九州本土の大きさを上回ると言われています。また、このまま所有者不明土地が増え続けると、2040年には約720万ヘクタールとなり、これは北海道全体の大きさに相当すると予測されています。

所有者不明土地は、公共事業や復旧・復興事業を進めるうえでの妨げになるだけでなく、空き地として長い間放置されることによって、雑草の繁茂やゴミの不法投棄、不法占有者などの問題が生じ、周辺の治安や公衆衛生に悪影響を及ぼす恐れがあります。

所有者不明土地問題と相続登記

所有者不明土地が発生する大きな要因のひとつとして「相続登記の未了」があります。

相続登記がされないと、登記簿上の所有者は亡くなった方のままの状態になり、その状態が長年放置されることで相続人の数が膨大になったり、相続人が音信不通や行方不明になることで、所有者不明土地となります。

これまでも、不動産を相続した際に登記をしないと権利を奪われるおそれはありましたが、相続登記をしなくても罰則がなかったため、多くの不動産がそのまま放置されていました。また、複雑な相続登記の手続きを所有者自身が行うのは容易なことではなく後回しにされやすいことや、相続登記を行うことで発生する固定資産税の支払いを避けるために登記しないといった理由なども所有者不明土地が増える原因になったと考えられます。

このように、相続登記未了が大きな要因の一つとなっている所有者不明土地問題は、時間が経てば経つほど不動産所有者の高齢化が進み、死亡者数が増加していくことによって今後ますます深刻化していく恐れがあります。そこで、近年の社会問題となっている所有者不明土地問題の発生予防と解消を目的とするために、相続登記が義務化されることになりました。

相続登記をしない場合に起こるリスク

相続登記を行わなず、そのままの状態にしておくと、今後は罰則が発生します。
また、所有者不明土地が増加してしまうという社会的問題が発生するだけでなく、相続人にも以下のような大きなリスクを伴うので注意が必要です。このような事態にならないためにも、なるべく早く相続登記は済ませておきましょう。

・権利関係が複雑になる可能性がある
・不動産取引が制約される
・他の相続人の債権者から差し押さえられる

権利関係が複雑になる可能性がある

相続登記を行わず放置してしまうと、その間に相続人の数が増えていき、権利関係が複雑化することになります。

遺産分割協議が行われず、相続登記をしないまま相続人のうちの誰かが亡くなると、次の遺産相続が開始されてしまいます。所有者(登記名義人)である方が亡くなって、その相続人である子供も相続登記をしないまま亡くなり、その子の子(所有者の孫)が相続人となり…とネズミ算式に相続人が増えていきます。相続人間で面識がない場合や、連絡先が分からないような状態では、相続人全員で合意して遺産分割協議を行うことさえ困難となってしまいます。

不動産取引が制約される

相続登記をしないと登記簿上の所有者は亡くなった方のままです。しかし、亡くなった方の名義のままで、不動産を売却したり、担保にしてローンを組むことはできず、必ず相続登記を行う必要があります。

今は売るつもりがないから相続登記はしなくてもいいだろうと放置してしまうと、いざ売却しようとしたときに他の相続人が行方不明だったり、手続きに協力が得られなかったりして売却ができないという事態になる恐れがあります。


他の相続人の債権者から差し押さえられる

借金を滞納している相続人がいた場合には、不動産が差し押さえられる可能性もあります。相続人の債権者は、相続人に代わって法定相続による相続登記を申請して、借金をしている相続人の持分を差し押さえることができます。また、その相続人自身も持分を売買したり担保提供したりすることが可能であるため、相続登記をしないで放置している間に相続人ではない第三者が権利関係に入ってくることもあり得ます。

このような事態を回避するには、差し押さえられる前に全ての相続人が相続登記もしくは相続放棄の手続きを済ませておく必要があります。

すぐに相続登記ができない場合は?「相続人申告登記」

誰が不動産を相続するのか、相続人同士が話し合って決めるのには時間がかかります。また、相続登記を放置していた場合、相続関係が複雑になり、戸籍謄本を集める作業など簡単には進みません。このような理由で、相続登記がすぐには完了できない場合はどうすればよいのでしょうか?

そこで、期限内に相続登記の申請をすることが難しい場合に、簡単に相続登記義務を履できるようにする仕組みとして、令和6年4月1日より新設されたのが「相続人申告登記」です。

相続人申告登記とは、不動産の所有者(登記名義人)について相続が開始したことと、自分が相続人であることを法務局に申し出れば、それで相続登記義務を履行したものとみなされる制度です。つまり、相続人申告登記をしておけば、とりあえず3年以内の相続登記の義務を免れることが可能です。一方、3年の期限内に相続登記できず相続人申告登記も行わない場合は、罰則の対象になります。

ただし、注意しなければならないのは、この申出をしたとしても不動産の所有権を取得したことにはならないことです。相続人として不動産の所有権を第三者に主張するためには、正式な相続登記を申請する必要があります。

また相続人申告登記は、申出をした相続人についてのみ、相続登記の義務を履行したとみなされますので、相続人全員がそれぞれ申出をする必要があります。

相続人申告登記について(法務省)

まとめ

今回は、相続登記の義務化についてまとめてみました。義務化の内容と、その背景についてお分かりいただけたでしょうか?

相続登記の義務化は令和6年4月1日よりスタートします。今後、相続等による不動産取得者は「不動産を相続(取得)したことを知った日から3年以内」に相続登記の申請を行わなければ、10万円以下の過料が科されます。過去に相続している不動産でも、まだ未登記であれば、義務化の対象となるので注意が必要です。相続登記を行っていなければ、その不動産の売却やローンを組むことができない等のリスクもありますので、相続登記はなるべく早めに済ませるようにしましょう。もし、期限までにどうしても相続登記が間に合わないという場合は、相続人申告登記という制度もありますので、ご活用ください。

相続登記はもちろんご自身で手続きすることもできますが、専門家である司法書士に依頼すると手続きもスムーズで安心です。相続登記に関してお困りごとがあれば、ぜひ北斗司法書士事務所にお任せください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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